映画「女王陛下のお気に入り」あらすじ

舞台は約300年前のイングランド。
名誉革命の時代を生き延びた英国の女王アン(オリヴィエ・コールマン)が主人公です。
英国は長らくフランスと交戦中にもかかわらず、この女王は政治に関心を示しません。
慢性的な体調不良に苦しむアン女王は、家臣にはわがままを言いたい放題、
溺愛するたくさんのウサギと戯れる日々です。
「女王陛下のお気に入り」という映画の題名が示す通り(原題は「お気に入り」を表わすThe Favourite)、
物語は側近として控えながら女王の愛情を奪い合う二人の女性を軸に展開します。
その一人のサラ(レイチェル・ワイズ)は、長らく女王の側近として寵愛を受け、
女王の日常生活だけでなく、国の政治のあり方にまで強い発言権を持ちます。
サラとアン女王は強い絆で結ばれており、二人の日常生活には両者の親密な関係が度々感じられるます。
気の強い性格の持ち主であるサラは、時に女王と転覆的な関係にあります。
すなわち二人は女王と側近という関係を超えて、時に女王の方がサラの言いなりになる、という場面も見られます。
このサラと「お気に入り」を争うもう一人の女性はアビゲイル(エマ・ストーン)。
アビゲイルはもとは上流の女性でしたが、一家はある問題を抱えたことかとから、家運が傾き、落ちぶれた身分となりました。
彼女はお手伝いとして女王に近づくことによって、再び上流に返り咲くきっかけを窺っています。
痛風の発作に苦しむアン女王にアビゲイルは痛みを和らげる薬草を処方します。
こうしたことからアビゲイルは徐々に女王の「お気に入り」の地位を獲得するようになり、
やがてはサラの地位を脅かす事態になります。女王の愛情を奪い合う巧妙な駆け引きが展開します。

映画「女王陛下のお気に入り」感想

複雑な心理戦が描かれるだけあって、物語の主要人物である三人の演技が素晴らしい。
特に側近の二人を演じたエマ・ストーンとレイチェル・ワイズは、
そろってアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたのも納得できるほど、妖しく美しい演技が際立っています。
女王の寵愛を獲得しようという物語の展開は、ある意味でその他の宮廷ものの映画の定番をなぞるようなかたちで進行しますが、
そこは監督であるヨルゴス・ランティモスの個性が十全に発揮されていて、画面の作り方や身体動作に斬新な解釈が加えられていて、
一つ一つの場面に引き付けられます。特にレイチェル・ワイズのダンスのシーンは可笑しみを誘う新しさがありました。
それぞれの演技と同様に、脚本も素晴らしくよく出来ていて、三人の複雑な心情の変化を極めて深いところで感じ取ることができました。
近代初期のイギリスの宮廷ということで、日本の観客の多くにとって馴染みのない時代設定ですが、
そうした時代背景が気にならないくらい、複雑な感情のドラマに没入できる映画でした。